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2022/07/05

社内DXとは?何のためにやるの?何をするの? 目的や推進方針をご紹介

目次

1.はじめに
2.DXと社内DXの定義
 2.1.DXとは
 2.2.社内DXとは
3.なぜ今、DX,社内DXが叫ばれているのか
 3.1.効率化
 3.2.Withコロナ時代への適応
 3.3.VUCA時代への適応
 3.4.風土改革
4.なぜDX,社内DXは進まないのか
 4.1.目的が見えていない
 4.2.手段が分からない
 4.3.資源が足りない、出資に見合わない
  4.3.1.ヒト 人材がいるからDXは推進できる
  4.3.2.モノ DXの推進にも運用にも、モノの不足があってはならない
  4.3.3.カネ ヒトとモノを支えるに足るか? 価値に見合うだけのカネを出せるか?
 4.4.熱意が足りない…変わろうという意志がない。そんな風土が、DXを止める枷となる
5.わが社も社内DXしたい!でもどうしたら…
 5.1.目的を確立する
 5.2.手段を整理する、情報収集する
 5.3.DX推進に必要な資源を確保する
  5.3.1.DX推進人材を確保・育成する
  5.3.2.DX推進に必要な機材・設備等を確保する
  5.3.3.予算を立て、確保する
 5.4.「変化に前向き」な風土を作る
6.社内DXにはどんな事例があるんだろう?
 6.1.リモートワーク
 6.2.ペーパーレス
 6.3.業務自動化
 6.4.風土改革
7.おわりに

 

1. はじめに

ここ数年、「DX」という言葉を耳にする機会は非常に多くなったのではないでしょうか?
「DX」とは「Digital Transformation」の略称で、日本語にすると「デジタルによる変革」です。
平たく言うと「デジタルの力で世の中を変えていこう!」という思想とその行動ですね。
そして「社内DX」とはDXに準じ、「自身の所属する会社を変えていこう!」という思想と行動のことになります。
「DX」は身近な変化が起きているので分かりやすいかと思いますが、「社内DX」はうまく進んでいない、中々変わらない…という悩みがあちこちで見受けられます。
今回はそんな「社内DX」について、なぜ進まないのか、どうすれば進められるのか、ということをお話していきます。

なお、本記事は読み飛ばしを前提に書いているため、記載の趣旨が重複する箇所があります。
あらかじめご承知おきください。

2. DXと社内DXの定義

2.1. DXとは

まずはDXという言葉についてお話していきます。

DXは「DigitalTransformation」の略称だということは冒頭でお話ししましたが、"Transformation"の部分を"X"と表す理由には以下のものがあるとされています。
 ・"Trans"に"交差する"という意味があることから、クロスを表現する"X"を持つ
 ・英語の接頭辞"trans-"は"across(~を超えて)"という意味があり、後ろ部分の"cross"を"X"と表現している

DXは、広義においては次の思想もしくはその思想に基づく行動とされています。

"ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる"

出典:InformationTechnologyandTheGoodLife(2004,ErikStoltermanUmeaUniversity,Sweden)
   https://www8.informatik.umu.se/~acroon/Publikationer%20Anna/Stolterman.pdf

この思想に基づいて世の中が変化してきていることは、日常生活の中でも垣間見える部分があるのではないかなと思います。

遠く離れた人にメッセージを送るために、
手紙を書く時代から電報を送る時代へ。
電報で送る時代からから電話で送る時代へ。
電話で送る時代からEメールで送る時代へ。
Eメールで送る時代からLINEやTwitterといったSNSで送る時代へ。

通勤電車の広告が紙ばかりだった時代から、
電光掲示板から流れる時代へ、
さらにテレビ画面のようなディスプレイ(デジタルサイネージ)から映像とともに流れる時代へ。

飲食店での注文もタブレットで。
コンビニの会計もセルフレジで。

そんな風にITの存在が、我々の暮らしを変えていますね。

そしてビジネスという分野に特化した場合、その狭義の「DX」という言葉の意味は次のように定義されます。

"企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。"

出典:経済産業省DXガイドライン
  https://warp.da.ndl.go.jp/collections/info:ndljp/pid/12166597/www.meti.go.jp/press/2018/12/20181212004/20181212004-1.pdf

具体的な事例は後述します。

2.2. 社内DXとは

社内DXも基本的な思想はDXと同じです。
範囲が会社の中で推進されるものに絞られる、というだけです。
図で示すと以下のような関係だと思ってください。

3. なぜ今、DX,社内DXが叫ばれているのか

さて、前章ではDX、社内DXの意味をお話してきましたが、そもそもにおいてなぜ今、やれDXだやれ社内DXだと騒がれているのでしょうか?

簡潔に結論を言ってしまうと「時代がそういう変化を求めているから」というものなのですが、もう少し掘り下げて話をしていきます。

3.1. 効率化

「効率化」というのは、ここでは大きく以下の二つの意味を指します。
 ・仕事に必要とする金銭または時間を削減したうえで、従来と同等以上の品質を確保すること
 ・仕事に与えられた時間もしくは金額内で、従来以上の品質および生産量を確保すること

例を挙げると「この書類を作る手間を減らそう」
「今まで原価300円で作っていた商品を、原価100円で作れるようにしよう」
「商品を1000個作るのに1カ月かかっていたけど、これを1週間で作れるようにしよう」
という感じですね。

そして多くの企業がこの「効率化」の施策をしていくことで、モノのコストが下がり供給のスピードは上がり、それでありながら品質が上がる。
DX、社内DXはその推進力として大きな役割を果たしているのです。

逆に言えば、DX、社内DX推進を怠ればあっという間に競争に負ける状況に追い込まれる可能性がある、ということでもあります。

経済産業省の「DXレポート」に記載されている「2025年の崖」。
そこに書かれているシナリオが、「競争に負ける可能性」の具体的な姿です。

https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_01.pdf

イメージを伝えます。
A社でやっている仕事を、同じ品質、100分の1のスピード、100分の1のコストで処理できるB社があります。
A社とB社は競合他社で、同じ市場でシェア獲得を狙っています。どうやって競争しましょう?

運送業で例示するならば、飛脚と運送用トラックが戦うようなものだと言えばイメージはより具体化するでしょうか。

A社では100日かけて1件、1件あたり1億円かかる仕事を、B社では1日で1件達成し、1件あたり100万円で済ませられます。

もしこの仕事に1件あたり1億2000万円の値段が付けば、A社は100日でようやく2000万円の粗利なのに対し、B社は1日でなんと1億1900万円もの粗利を叩き出します。

100万円で出来るとわかれば価格低下も出来ますし、そうすればより安い値段で発注したがるのが世の常です。
で、やがて1億円かかる会社にはそもそも発注が来なくなります。

そして、そういう会社は1社ではなく、ライバルとなる数多の会社がそうなっていきます。

……割と極端な例かもしれないですが、こんな状態では同じ土俵で戦って勝つのは極めて困難です。
しかし仕事の基盤のアップデート(=業務改善)を怠れば、「A社サイド」で戦わなければならなくなります。

なるべくB社サイドで戦えるよう、DXの推進が必要だとあちこちで叫ばれているわけです。

3.2.Withコロナ時代への適応

2020年4月頃から、COVID-19、「新型コロナウィルス」と呼ばれるウィルスによる感染症が世界中で爆発的に蔓延したのは記憶に新しいのではないでしょうか。

驚異的な感染力と毒性は我々の生活に多大な影響を与えました。
簡単に挙げると、主要な生活の変化は以下になります。

①ソーシャルディスタンス
②マスク着用
③アルコール手指消毒
④座席へのパーティション設置
⑤オンラインでのコミュニケーションの増加
⑥物理的な移動機会の減少

「DX推進」という視点では、このうち重要な変化となるのは
⑤、⑥になります。

なるべく直接の対面を避けるため、オンラインでの会話・会議を推進する。
なるべく移動の機会を減らすため、リモートワークや電子ファイルでの手続を活用する。

そうした取り組みがこれから生きていくうえで求められていくので、DX推進での適応が叫ばれているわけですね。

3.3.VUCA時代への適応

前節「Withコロナ時代への適応」とも関連しますが、現代は「VUCA時代」と呼ばれています。

VUCAとは簡単に言ってしまうと「将来を予測するのが困難な状態」です。

「数秒後出会う景色さえも 想像できなくなってしまった」というフレーズがBUMP OF CHICKENの「パレード」という楽曲に存在しますが、大体そういう状況だと思っていただければと。

以下の4つの言葉の頭文字をとって、「VUCA」という略称になっています。
 ・Volatility  :変動性
 ・Uncertainty:不確実性
 ・Complexity :複雑性
 ・Ambiguity :曖昧性

今日までの暮らしが、明日も明後日も変わらず続く保証はどこにもありません。
しかし明日がどう変わるかを予測するのも非常に困難です。

そういう時代に必要となる力は、「変化する力」です。
それも素早く変化していくことが求められ、変化出来ない者、変化が遅い者はあっという間に置いてけぼりにされます。
脅しでもなんでもなく、存続/生命に直結するケースだって珍しくありません。

素早い変化に必要となるものは、主に「対策の積み重ね」と「反射神経」です。
どんな変化が起きても対応できるように、事前にあらゆる事態への備えをしておく。
そして変化が起きた時に、素早く反応して素早く順応する。

現代社会においては、その両方を強化するうえで主要な役割を果たすのがデジタル技術です。
そしてデジタル技術を活用して変化していくこと……つまりDXこそが、
VUCAの時代を生き抜いていくための有力な手段なのです。

3.4.風土改革

上記3点にも関連することではありますが、DXはそもそも人々の暮らし、ビジネスにおいては仕事もしくは職場の
基盤や仕組みを変えていくための取り組みです。
そしてその取り組みは単純に手続きなどを変えるだけではなく、人々の価値観も変えていくのです。

リモートワーク導入に沿って、MicrosoftTeamsを活用するようになった。
仕事に必要な情報などをTeamsで共有することが当たり前になった。
いつしか、オンラインで会話することや情報共有をすることが当たり前になり、
プライベートなことも共有するようになった。
結果として、社員間の交流が以前よりも活発になった……なんていう話は時折聞きます。

今までよりも物理的に移動はしにくくなって、直接顔を合わせることも難しくなって、今まで通りのコミュニケーションがとりづらい時代。
だからこそそれに頼らないコミュニケーション手段を構築し、それに依らないコミュニケーションを当たり前とする風土を作り上げていくことが、新しい時代には必要になってくるのではないでしょうか。

4.なぜDX,社内DXは進まないのか

巷でDX、社内DXと騒がれ、そして実際に社内DXを推進している会社は数多くあります。
ところが全体の割合で見てみると、まだまだ多数派と言える段階には至っていません。
ここではその要因について、軽くお話していこうと思います。

まず、DX推進のためには何が必要でしょうか?

システム開発の流れとして「ウォーターフォールモデル」と呼ばれるものがありますが、これに照らし合わせてDXに必要なプロセスを見ていきましょう。

まず「要求定義」「要件定義」。
次に「基本設計」「詳細設計」。
続けて「実装」「単体テスト」「結合テスト」「受入テスト」。

「要求定義」「要件定義」は、目的をはっきりさせるフェーズです。
「基本設計」「詳細設計」は、目的達成のための手段を確立するフェーズです。
「実装」「単体テスト」「結合テスト」「受入テスト」は、確立した手段に基づいて実際にモノを作っていく(+ちゃんとモノが意図したとおりに動くか確認する)フェーズです。

上記を整理すると、「目的」「手段」「実行」の全てが揃っていて、これらが一貫性を持っていることが必要になります。
これに加え、「実行」には作り切り、作ったものを使い続けていくための「資源」と「熱意」が必要です。

これらを踏まえると、DX推進には以下の全てが揃っている必要があると考えることができます。
※DXに限らず、何かを成し遂げようと思うならどんなことでも共通かもしれませんが
 ●目的
 ●手段
 ●実行
  ◆資源
  ◆熱意

逆に言えば、これらが一つでも欠けていたらDXは円滑に推進することができないということですね。
それぞれにフォーカスを当ててみましょう。

4.1.目的が見えていない

一番に忘れてはいけないのは、そもそもDXはITを活用して世の中の仕組みや
基盤を変えるための取り組みだということです。

言い換えれば、何を変えようとしているのか決まっていない、分かっていない状況ではDXは推進のしようがありません。

何を変えようとしているのかを決めるには、「そもそも何がしたいのか」という「目的」が必要です。

4.2.手段が分からない

何をしたいかは決まった。

では、どうやってそれを実現するのか?
何をどう変えれば目的を達成できるのか?

ここも分かっていない状態では、残念ながら「変える」には至りません。

ちなみに「分かっていない」というのにも種類があります。
そもそも導入できるシステムを知らないケース、システムは知っているけど適切な選択ができないケース、過去に導入し、老朽化したシステム(レガシーシステム)をどう刷新したらよいか分からないケースなど、「どうすりゃいいんだ……」と頭を悩ませる要因は多岐にわたります。

ここから「やれる……やれるんだ!」と悔しさと無縁の涙をその目に光らせるためには、こうした要因をきちんと紐解いて一つ一つ対策を取っていく必要があります。

4.3.資源が足りない、出資に見合わない

次に考えることは、これを実現するための資源はあるのか?
資源をどうやって確保するのか?というところです。

ここでいう「資源」とは、主に「ヒト、モノ、カネ」のことを指します。
「時間」も資源として考えられるものですが、ここでは定義に含めないものとします。

これらがそもそも不足しているのか、不足しているわけではないけどそちらに割くだけの"うまみ"がないのか、という話になります。

4.3.1.ヒト人材がいるからDXは推進できる

人材がいなければ、成し遂げられません。

目的を明確にするにせよ、
手段を確立にするにせよ、
その後確立した手段に沿って推進するにせよ、
相応の意思決定能力と実行力を持った人間が必要になります。

もちろん、その人を支える技術者やマネージャなど、支援する人間の存在も忘れてはなりません。

4.3.2.モノDXの推進にも運用にも、モノの不足があってはならない

システム構築や運用には、機材などが必要になってきます。
少し前だと自前のシステムを作るのにサーバやネットワーク機器などを構築していました。
今だとクラウドサービスと呼ばれる、自前のサーバやネットワークを持たずともシステムを構築できる手段がありますが、それでもクライアント機材(利用者がサービスの利用のために使う機器。スマートフォンなど)は必要になってきます。

4.3.3.カネヒトとモノを支えるに足るか?価値に見合うだけのカネを出せるか?

生々しい話になってしまいますが、現代においてお金というのはヒトやモノを維持していくうえでは欠かせないものです。
これから作るものが、果たして支払うお金に見合うメリットを提供してくれるのか……というのも重要な視点ですね。
これらがそろって、ようやく現実にDXの推進が形となって姿を現してくれるわけです。

ちなみにこの「カネがない」問題は、立場によってその理由が変わってくると思います。
経営層の視点に立てば、上述の通り「資金自体が不足している」「得られる恩恵が払うお金に見合わない」といった理由になりますし、現場社員の視点に立てば、必要としているのに稟議が通らない(=経営層が必要性を理解してくれず、お金を出してくれない)という理由になったりもします。

4.4.熱意が足りない…変わろうという意志がない。そんな風土が、DXを止める枷となる

目的は分かっている。
どうやればその目的を達成できるのかも分かっている。
十分な人材も、機材も、資金も確保できた。
それでも、DXが思うように進まないことがあります。

その理由の一つとして「変えること」「変わること」への前向きな姿勢、変化した暮らしを継続していく熱意がないことが挙げられる場合があります。

誰にその熱意がないか?
それは組織によってマチマチです。
経営層かもしれませんし、管理職かもしれませんし、現場社員かもしれません。

経営層からすれば、もしかしたら「自分の仕事が楽になるわけではないのにお金を出す理由が分からない」
「今までのシステムが使えているんだからそれで問題ないんじゃないの?」と思って変えるのを嫌がる
(厳密には出資を嫌がる)かもしれません。

管理職の者にとっては、DXによって今まで行ってきた業務プロセスなどが大幅に変わる可能性がある。
たとえ「慣れれば今より楽になる」と頭で分かってはいても、それに対して新しいツールの使い方を覚えたいという熱意がついてくるとは限りません。

現場の者にとっては、ただでさえ仕事が忙しいのに上の気まぐれで変なツール導入されて、
「覚えなきゃいけないことがまた増える」「今までのやり方でやれてたんだから問題ないじゃん……」と、変化に後ろ気味な者もいるかもしれません。

仕事をしやすくするために推進するはずのDXを、
仕事する人間から受け入れられなかったら、
それこそ徒労に終わるというものです。

「風土」や「空気」というものに、理屈は勝てないことが多いのです。

5.わが社も社内DXしたい!でもどうしたら…

「DXを推進するべきだっていうのは分かっているんだけど、でもどうしたらいいのか分からないんだよね……」
とお悩みの方は多いかと思います。

どうしたらいいか分からないというときは、大抵「どこに問題があるか分からない」か、「問題は分かっているけど、どう対処したらいいかわからない」というケースが当てはまるかなと思います。

そもそも問題が分からない場合は、前章「なぜDX,社内DXは進まないのか」を参照ください。

ここでは、一旦目星のついた問題に対して、「どう対処したらよいか」という方針を大まかにお話していきたいと思います。

ちなみに、本章の構成は前章「なぜDX,社内DXは進まないのか」と対比を取る形で記載しています。
問題と対策は表裏一体だからです。

5.1.目的を確立する

まずDXを推進する目的をはっきりとさせましょう。

重要なことは、「会社が抱えている課題を解決するためにDXを推進する」ことです。

闇雲にDXと騒いでいても、それが会社の抱えている課題に沿わない方向に進んでしまったら
いい結果は生まれません。

例えば「社内の勤怠管理体制・方針が支店ごとに異なるため、これを取りまとめる本社の経理・人事の負担とコストが増加している」という社内の課題が潜んでいたとします。
しかしこの社内の課題を無視して、「Zoom会議で役員が目立つよう、外枠の設定やスポットライトの機能を活用する」「社員の居眠りを防止するためのカメラと監視ソフトを導入する」とか「会社のエントランスの案内板をデジタルサイネージ化する」みたいな方向で社内環境改変に取り組むのは頓珍漢もいいところです。

こういうのは「課題を分かっているけど"見栄"や"DX推進してます、という箔欲しさ"のためにやっている」
ところも稀にあると思いますが、「社内に潜んでいる課題が分からない」「課題があるらしいことは分かっているけど、どう調べたらいいのか分からない」みたいなケースが結構多いのではないかなと思います。
そうした「課題を見つけられない」という問題から、ちゃんとDX推進が出来ない状態が出来てしまうわけですね。

課題をどう探すかは、様々なアプローチがあります。
社内アンケートを取ってみる。
最近の業務の進め方について、他社の情報を収集し、自社と比較する。
近年の情勢(時代の流れ)から考えてみる。
勤怠情報から「稼働が高くなっている部署や社員」で絞って目星を付ける。
などなど。

是非「このためにDXが必要だ!」という点を見つけて欲しいと思います。

5.2.手段を整理する、情報収集する

DXの目的、課題、やりたいことに沿って、「どうすればそれを実現できるか」を確立しましょう。

課題解決の手段を確立するためにやらなければならないことは多種多様です。
業務プロセスの見直し。
デジタルツールを活用するプロセス範囲の選定。
利用するツールの選定。
このツールの導入手段。
導入手段というのは、例えば「オンプレミス(社内でサーバなどインフラを一から構築して運用する)で作る」「AWSなどのクラウドサービスを活用するか」という話です。
ツールを導入・運用するためのコストの計算、確保。
人員の選定、配置、確保。
スケジュールの立案。
マネジメント方針の立案。
……その他諸々。
やるべきことは山積みですが、これらを踏まえて正しく推進してこそ、初めてDXが成立します。
この辺はもっと詳しく記事を書きたいのですが、それはまた別の機会に。

5.3.DX推進に必要な資源を確保する

さて、「どうすればDXを実現できそうか」という筋書きが出来たとして、次に必要なのはその筋書きを実際の形にすること。
もっと言えば形にするための資源を確保することです。

お芝居で言うなら「台本が出来ている」という状態から、実際に上演する「舞台の形にする」というイメージでしょうか。

5.3.1.DX推進人材を確保・育成する

まずはDXを推進する人材を確保することから。

この「人材」がカバーする分野や範囲は、個々人によって異なります。
そもそも前節で述べた「目的・課題の発見、DX推進方針の策定」や「課題に沿ったシステム設計・運用方針の策定」も、相応の意思決定能力を持った人材がやる必要があります。

ちなみにこの前者を推進・策定するのは「ITストラテジスト」、後者を推進・策定するのは「システムアーキテクト」などと呼ばれる人です。
システムアーキテクトの意思決定を支援する者には
「データベーススペシャリスト」
「ネットワークスペシャリスト」
「エンベデッドシステムスペシャリスト」
「情報処理安全確保支援士」
などと呼ばれる各種IT分野の専門家がいたりします。

そして彼らの考案に基づいて「プロジェクトマネージャ」と呼ばれる人が、必要な予算や人員、機材、期間を決め、彼らの決定や指示に基づいてシステムエンジニア、プログラマなどが手を動かしてモノを作っていきます。

モノを作った後に運用のフェーズがありますが、これも運用の専門家たる
「ITサービスマネージャ」と呼ばれる人が先頭に立ち、
システムエンジニアやプログラマなどを指揮してシステムの面倒を見ていきます。

と、いろんな人たちが顔を出していますが、「人材」というのにもいろんな種類がいて、それぞれの工程をしっかり推進できて初めてDXが成り立つのです。

こういった人材を確保するうえでは、
・必要なことは何か
・必要なことをこなせる人間はいるか、現在の社内人材で足りるか
・足りない場合、どんな人材が足りないか
・その人材は、どこで探せば見つかるか
・その人材は、何があれば自分たちの会社で働いてくれるか
ということを意識して行動する必要があります。

忘れないようにしたいですね。

5.3.2.DX推進に必要な機材・設備等を確保する

人材と同じく、機材・設備の確保も必要です。

どんなに優秀な人をそろえたって、肝心の材料がないのにモノは作れません。

まずはあらゆるシステムの基盤となるハードウェア(サーバやパソコン、スマートフォンなど)の確保、ハードウェアで動かすためのソフトウェア(OS、ミドルウェア、アプリケーションなど)の確保、といった具合に用意しないといけないものはたくさんありますので、不足なく確保していきたいところですね。

ちなみに上記のハードウェアもソフトウェアもレンタルするのが主流ですが、どこまでを他社に運用してもらうか(クラウドを活用するか)、どこからを自社の責任で運用するのか、はいろんな切り分けがあります。
前節で述べた「オンプレミス」と「クラウドサービス」に関わる話で、もっと細かく分けると「オンプレミス」「IaaS」「PaaS」「SaaS」という枠組みが存在します。
どういう切り分けなのかは、下図を参照ください。

どのような形であれ、必要なものを揃えないといけないのは変わらずです。
どれが自社にとって良い方針なのかは、よく検討が必要です。

5.3.3.予算を立て、確保する

人員も機材も、お金がなければ確保できません。

「どうやってお金を確保するか」という話は立場や状況によって違ってくると思いますが、どの立場においてもお金は有限であり、足りないお金は工夫して節約するか、交渉して調達してくるというのが大まかな手段になります。

ただし、「工夫して節約」の指す「工夫」は、
「人件費の削減」とりわけ「給料カット」「残業代未払い」「自腹での備品購入」などという
「法律・人道・コンプライアンスに反する手段」のことは指しませんので、
くれぐれもご注意ください。

5.4.「変化に前向き」な風土を作る

「変化を嫌がる・恐れる」風土・空気が理屈に勝てないことは前章でお話ししたとおりですが、ではどうしたらその空気が変わっていくのでしょうか?

これは非常に難しい課題で、「決まった答えは存在しない」「時代や背景によってどうとでも変わる」というのが率直なところだろうと思います。
それでもやらなければ変わらず、変わらなければ進まず、進まなければ淘汰されていくことだけは確定事項です。

しかし、変われ変われと騒ぐだけの上司に、誰かが動いてくれればいいのにと燻るだけの一般社員。
組織の現状がそんな状態では、「変わる」日が来るより先に会社が滅びます。

そんな日を指をくわえて待つくらいならば、まずは自分だけでも行動を起こしましょう。
まずは自分だけでも、「変化」してみましょう。

最初は奇異の目で見られようとも、自分の支持者が集まり、支持者が増えることで少しずつ空気が変わり、「変わろうとする層」がある程度まで増えて来たらこっちのものです。
日和見で動かずいた社員も、流れに乗って変わろうとする。
そんな空気が生まれてくると思います。

そこまで行きつくのには根気もいりますし、ときに周囲の理解や協力も必要です。
それはそれは辛い。
それでもVUCAの時代、やらずに生き残るという道はありませんから、この工程を「いかに楽にするか」「いかに楽しむか」「いかに充実させるか」創意工夫を凝らしてみるとこの「辛い道のり」も見方が変わってくるかもしれません。

また、協力者を増やすうえでは、地道ながら「試行錯誤」と「一人一人の意識づけ」が必要になると思います。
どうすれば変化に前向きになるのか?は、人によって様々。

お金がたくさんもらえるようになれば前向きになる人もいます。
残業の時間をなくせられれば前向きになる人もいます。
「世の中を変えられた」「会社を変えられた」という実感を得ることで前向きになる人もいます。
会社の人とのコミュニケーションの機会を増やせることで前向きになる人もいます。
逆に会社に余計な干渉をされず、プライベートを充実させられることで前向きになる人もいます。
安心して暮らせる世の中に出来れば、それで前向きになる人もいます。
VUCAの時代、変わらなければ死ぬ。その危機感だけで変化出来る人間もいます。
なんかよくわからないけど、周囲の空気が変わったから便乗して自分も変わろう、という人もいます。

生きがいも働く意味も価値も、前を向く理由も千差万別です
ただし、その大半を叶える手段は存在します。
一人一人の思いを、企業理念から外れない範囲で、叶える。
自分が変わるにしろ人からの協力を得るにしろ、「変化」と「個々人のモチベーション」が繋がるように思考を整えていくことが、風土改革の道です。

6.社内DXには、どんな事例があるんだろう?4つの事例を紹介

ここでは、社内DXの典型的な事例を紹介していきます。

社内DXを推進するうえで典型事例を知ることは重要です。
典型事例ということは「多くの会社が取った行動」ということであり、「多くの会社がその行動をとった」ということは「多くの会社に共通する背景や課題が存在する」、「自社にとっても参考となる可能性がある」ということです。

ここでは大きく「リモートワーク」「ペーパーレス」「業務自動化」「風土改革」という4点に絞ってお話していきます。

6.1.リモートワーク

「DX」「社内DX」の代表例としてそこかしこで挙げられるリモートワーク。
わざわざ会社に赴かずとも出来る仕事であれば、自宅でもサテライトオフィスでも任意の場所で仕事が出来るようにしよう、という思想から発生したDXです。

日本国内で目立つようになったのはCOVID-19蔓延以降ですが、それ以前にもリモートワークに進んでいく流れ自体は存在していました。

これは「リモートワークが必要とされる何かしらの課題」が、一部の企業においてはCOVID-19発生以前から存在していたのだと思います。

そうした「課題の違い」こそあれ、今のご時世ではリモートワークは実現できるのであれば導入しない手はないくらいメジャーなDXです。

6.2.ペーパーレス

書類を電子媒体で作れる、管理できるような時代になってから、紙媒体が会社の手続きで顔を出すことは少なくなりました。
理由を簡単に言えば、紙媒体は情報のやり取りに時間とお金がかかるからです。

情報のやり取りの時間が少なくなるという点は、身近なところでも恩恵を得られる事例があるかと思います。

例えばスマートフォンの回線契約は、従来はわざわざショップへ赴いたり書類を郵送で送ったり、その書類を審査したりという時間があって完結までそれなりの手間と時間がかかっていましたが、現在だとその契約がオンラインで完結し、30分程度で済ませられるようになりました。

それと同じように、勤怠管理に使っていた勤務表を紙媒体から電子媒体に変えたり、経理の清算書を電子媒体にしたり、会社通信や給与明細を電子媒体にしたりすることが、社内の情報共有や連絡を素早く・安価にこなすための礎となっているわけです。

情報のやり取りの早さは、それだけで圧倒的な生産力の差を生み出します。
是非取り組みたいDXですね。

6.3.業務自動化

各社の社内業務というところで、「人の手で行っていた作業を、機械など人ならざる者にやらせる」という取り組みを自動化と言いますが、この取り組みはとても大切です。
自動化によるヒューマンエラーの削減と工数の削減は、そのまま品質や生産力に関わってくるからです。

例えば給与明細を作る際に、表にまとめられた基本給と残業時間実績の一覧を基に、
給与明細の数字を計算していちいち打ち込んで……、なんてことをやっていたらそれだけで日が暮れます。

専用のツールがあるならそれを導入し、
なくてもExcelに計算式を入れて自動算出が出来るようにしておくなど、
出来る工夫はしておくに越したことはありません。

6.4.風土改革

最後にお話しするのは風土改革です。

もしかすると前章をお読みになった方のうち、一部は「ん?」と思われるかもしれません。

DXを進めるために(前準備として)風土改革が大切だという話をした。
なのにDXをした後も(導入後の効果として)風土改革をするの?
このように思われた方がいらっしゃるかと思います。

これは結論、イエスです。
とはいえこちらは「風土改革そのもの」を目的としてDXを推進するというよりも、環境が変わったことで副次的に風土改革が起きたという方が近いかもしれません。
仕事への価値観が変わったと言えばよいでしょうか。

例えば「仕事は出社して職場で行うのが当たり前」の風土が、リモートワークの導入によって「家で仕事をすることが普通」という風土に変わったり。
例えば「経費精算等の書類の申請から承認完了までは2~3日かかるのが常」という価値観が、ペーパーレスの導入によって「10分で終わってなんぼ」という価値観に変わったり。
例えば「顔を合わせなければ会話をしない」という風土から、オンライン会議やチャットの導入によって「いつでもどこでも気軽に声を掛けられる」という風土に変わったり。

これを目的にDXを推進する事例は珍しいかもしれませんが、現代の働き方の価値観に沿って、多くの人々が働きやすい環境を作っていく、という目的をもってDXに取り組むのであれば、この「風土改革」を出発点としてみるのも面白いかもしれませんね。

7.おわりに

ここまで様々なことをつらつらと書いてきましたが、最後に大まかに本記事をまとめさせていただきます。

 ・社内DXは、会社の課題や時代背景に合わせて、
  デジタル技術を活用して変革を推進する取り組みである
  故に社内DXは、課題を正しく見つけ、正しく目標を定めたうえで進めていく必要がある
 ・社内DXには純粋な技術力も必要だが、それ以外にも時代の変化に対応しようという
  人間の意識が必要になる。その意識を持ちやすい空気を作ることもまた重要である
 ・社内DXを推進していった先には、新しい時代の社内価値観・風土がある

という感じで、本記事をお読みいただいた皆様には是非社内DXへの取り組みに前向きになっていただきたいと願う次第でございます。

弊社も皆様の会社の社内DX推進に、少しでもお力添え出来ればと願っております。
お問い合わせ等ございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

それでは今回はここで筆を擱かせていただきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

下村

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