ARX CHALLENGERS BLOG技術者ブログ
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2022/03/17
皆さんは、DXとかSociety 5.0といった言葉を聞いたことがありますか。
これらはともに、「現代」を示す言葉ではなく、ちょっとだけ未来の、それも良い未来を示す言葉となります。
DXについては、2018年に経済産業省が次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。
Society 5.0については、内閣府で次のように表現しています。
「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」
うん、両方ともなんか難しいこと言ってますね。
まずはDXをわかりやすくすると、
「データとデジタル技術を活用して、ビジネスモデルを変革するとともに、競争上の優位性を確立する」
で、いかがでしょう。
ここにさらにDXのお手本を当てはめてみましょう。
DXのお手本と言えば皆様も使ったこと、見たことのある通販サイトではないでしょうか。
「データとデジタル技術を活用」
⇓
「専用のWebページを使って、買物客と各店舗、各倉庫をITでつなげてしまう」
「ビジネスモデルを変革する」
⇓
「買物客が店へ行って買物をするというビジネスモデルから、店に行かなくても買物ができるビジネスモデルに変革する」
「競争上の優位性を確立する」
⇓
「買いたいときに買えるようになり、顧客中心で買物ができる」
ちょっといいかえると、
「ITを使って、ユーザーが喜ぶ新しいビジネスモデルを創造、繁栄させる。」
なんとなくイメージがわいてきませんか?
Society 5.0でやりたいことは、「経済発展と社会的課題の解決」ですね。
その手段として、「IT」があるのですが、それらを「今まで以上に有効活用しましょう」と言っています。
①いろいろなモノ(スマホ、センサー、カメラ等)からいろいろな情報を収集、共有し、
②収集した情報を使用して分析、整理し、必要な場所、時間に必要な人へ提供し、
③その情報をもとに、ロボット等の機器が自動でサービスを提供することで、
④労働力の問題や、地方の問題を解決させる。
①はIoT、②はAI、ビッグデータ、③はロボット、自動運転の技術が使われることになります。
DX、Society 5.0共に、実現できれば今までより住みよい生活が待っているのは想像に容易いのではないでしょうか。
ですが、それらを実現する為には、新たに発生する大量の通信データを、高速かつ高品質で然るべきところに送信する必要があります。
「大量かつ高速、そして高品質」の通信と聞くと、皆さん「5G」が思い出されるのではないでしょうか。
実際、スマホ等で利用されている5Gネットワークは「大量かつ高速、そして高品質」での通信が可能な無線ネットワークです。
では、実際に皆様の自宅や会社等にひかれている、有線のネットワークはどうでしょうか。
有線ネットワークにおいても5Gに負けない、今まで以上に「低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送」を実現するための研究開発が進められています。それがIOWN構想と呼ばれるものです。
では、そのIOWN構想とはどのようなものでしょう。
IOWNとは2019年にNTTが提唱した構想で、
・次世代の情報通信ネットワークをより良いものにしたい!
・今まで出来なかった事をできるようにする為に大容量のデータをより高速に送受信できるネットワークを構築したい!
といった思想の元、2030年の実現を目指し、日々研究、開発しています。
そして、その構想を支えている3つの技術の柱が以下の3つになります。
・オールフォトニクス・ネットワーク
・コグニティブ・ファウンデーション
・デジタルツインコンピューティング
やはり難しいですね。もうちょっとわかりやすくしてみましょう。
最初に、オールフォトニクス・ネットワークについて調べてみましょう。
オールフォトニクスネットワークとは「All Photonics Network」と書きます。
AllとNetworkは想像つくと思いますが、ではPhotonicsとはなんでしょう。
Photonicsとは光学(optics)の一部であり、光の性質を応用する装置・技術についてのことを指すそうです。
つまり、光通信とか光ケーブルとかの光工学のことになります。
ですので、「All Photonics Network」とは、全て光通信でつなげたネットワークのこととなります。
いやいや、もうインターネットとか光回線使用していますよね。
光通信でつながっているんじゃないのですか?これ以上何をやるのでしょうか?
実は、光通信と言っても全部が全部光で通信しているわけではないのです。
光の信号も、経路を変える場合には一度電気信号に変換したうえで、ルーチングやスイッチングを行っているため、ルーターを通すたびに処理のロスが発生してしまいます。
なので、これらのルーチング処理も光の信号のままでやってしまおう、その方が無駄がなく早いじゃないか!というのも、「All Photonics Network」を実現するための一つだったりします。
ちなみに、皆さんの家の中でも光から電気信号への変換は行われています。
ONUという、終端装置が光回線を利用している家には必ずあって、その先からLANケーブルが各家のルーターにつながっていると思われます。コレがまさに光から電気への変換です。
また、PCのマザーボードとかにある集積回路に関しても電子での処理から光への処理へ切り替える研究も進んでいます。
その結果、集積回路の高速化が進むことになり、各種機器の高速化につながり、結果としてネットワーク全体の高速化につながることになります。
毎度のことながら、まずはコグニティブ・ファウンデーションという言葉を掘り下げましょう。
「Cognitive Foundation」と書きまして、「Cognitive:認知、認識」「Foundation:基盤」という意味です。
それぞれの基盤同士を認識させて、最適な構成を組む。といったところでしょうか。
やりたいことは、各ネットワークリソースの最適化です。
最適化に当たり、まずはいろいろな機器同士の情報を管理する必要があります。
誰がどこにいて、どのくらい働いていて、余力がどのくらいあるのかなどなど。
それらを理解したうえで、忙しい人には仕事を減らす。
余力がある人にはもうちょっと頑張ってもらうなどのコントロールをしていくわけです。
そのコントロールする人をコントローラーとして各地に配置してあげて、それぞれの機器と随時会話し、情報をもらいつつ、指示を与えることを繰り返してあげるわけです。
さらに一歩、最適化を目指すために、コントローラー同士も会話してもらうようにします。
車で荷物を運ぶ場合、運転手の都合や車の都合だけでも、道路の混雑状況だけでも適切には荷物は運べないですよね。
運転手をコントロールする人と、車をコントロールする人と、道路の混雑状況を把握している人が、それぞれ意見を出し合い、最適な方法を見つけてもらう必要があるわけで、今回のコグニティブ・ファウンデーションに関しても、同じようにコントローラー同士の会話から最適化を行っていくのです。
さらにさらにもう一歩。
今まではコントローラーからの情報をもとに、最適化を行っていました。
ここを自律的に行動できるようにして、人の手を貸さずに動けるようになってもらいましょう。
そう、AIでの自動化になります。
コントローラーで収集した情報を元にAIで状況を分析、最適化を行った上で、各機器にコントローラーから指示を出す。
これを自律的に実行していくのが、コグニティブ・ファウンデーションとなります。
デジタルツインコンピューティングも訳してみましょう。
Digital Twin Computing、まず「Digital Twin」は「デジタル空間上の双子」という意味で、現実世界にあるモノをデジタル上に複製することになります。
では、デジタルツインを使って何をするのでしょう。
パッと浮かぶのはシミュレーションです。
現実と同じモノをデジタル上に作成しているので、そこに時間経過による外的要因を与えることによって、未来予知がより正確にできるようになります。
話を戻して、ではそのデジタルツインを使ったコンピューティングとはなんでしょう。
今までのデジタルツインは、「人」のデジタルツインを作成したら、人だけ。
「車」のデジタルツインを作成したら、車だけで予知、予測を行っていました。
それら複数のデジタルツインを掛け合わせることによって、今までより現実への再現度の高い、未来予測やシミュレーションを行おうとしているのです。
やりたいことは「いかにデジタルを現実に近づけていくか?」であり、「Society 5.0」で謳っている「社会的課題の解決」に向けてのシミュレーション技法のひとつとなることでしょう。
ですが、まだまだ不勉強なこともあり、「どうやったらデジタルツインコンピューティングが実現できるの?」については、全く理解ができていません。
いつか、改めてデジタルツインコンピューティングの実現方法と素晴らしさについて書ければいいなと思っています。
さて、IOWN構想が実現した暁には、何ができるようになるのでしょうか。
どうなった未来が予想されるでしょうか。
わかりやすいところから行くと、通信ネットワークが非常に高速になります。
光回線網だけでなく、5Gをはじめとした無線ネットワークもです。
コグニティブ・ファウンデーションには無線の最適化も含まれているからです。
また、オールフォトニクス・ネットワークにより、低遅延の通信が可能となります。
5Gについても同様な話がありましたが、ロボットなどの遠隔操作などが今まで以上に身近になるのではないでしょうか。
最終的にはどのような未来がこの先に待っているかの予測にも使われるのではないでしょうか。
オールフォトニクス・ネットワークとコグニティブ・ファウンデーションによる通信の高速化、最適化により、大量の情報を正確に、かつリアルタイムに収集できるようになるでしょう。
その情報からデジタルツインを作成し、機器の不良や故障の検知と予測、温度や湿度、気圧といったものからの天候の予測、またそこからの災害の予測と回避。
交通量や道路状況からの事故の予測と回避。
もしかしたら、この先の動物のさらなる進化予想までもが見られるようになるかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
実は弊社でもIOWN構想の実現に向けた、一部領域にてお手伝いをさせていただいております。
その内容について、若手技術者やその家族といった、専門にやっていないメンバー向けに説明したいなぁと思い立ち、書いてみました。
自分も、まだまだ不勉強なところもあり、「こっちのほうがわかりやすいよね。」「これの解釈は違うんじゃないの?」等ありましたら、教えていただければ幸いです。
はるくんパパ