ARX CHALLENGERS BLOG技術者ブログ
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2022/03/17
皆様初めまして。株式会社アイレックスの吾郎丸と申します。
現在は某拠点の責任者を務めていますが、かつてはシステムエンジニアとしてシステム開発やRPA導入を行っていました。
その中で開発現場における各種業務の「自動化」についての検討・導入を行ってきました。
今までの業務経験から、RPAを成功裏に定着するための手引きをご紹介しようと思います。
導入の参考にして頂ければ幸いです。
RPAは"Robotic Process Automation"の略で、直訳すると「ロボットによる処理(業務)の自動化」となります。
PC内のRPAツールは、Excel/Word/ブラウザ等あらゆるアプリケーションを操作することができます。
RPAツールにはシナリオと呼ばれる操作の一連の流れを作って読み込ませる必要があります。
残念ながらAIが勝手に考え、最適な順序で業務を実行するには至っておりません。
例えば、
"C:\work\業務配置表.xlsx"ファイルを開く
→"C:\work\社員一覧表.xlsx"ファイルを開く
→社員一覧表.xlsx Sheet1シートのA2セルからA30セルをコピー
→業務配置表.xlsx Sheet1シートのC3セルに貼り付け
のようなシナリオを書くと、RPAツールが忠実に実行してくれます。
一般的に、ある目的の業務を人間の代わりに実行してくれるシナリオおよびシナリオの集合を「ロボット」と呼びます。
ロボットには社員IDを与えたり(社内システムログインのため便宜上必要な場合もあります)、愛称をつけたりして可愛がってあげてください。
実際に擬人化して社員として育てている企業様もいらっしゃいます!
RPAロボットは「繰り返し操作・単純操作」を得意としてます。
大量のExcelファイルのコピー&ペーストやExcelからのpdf出力作業などを時間問わず夜通しでも実行してくれます。
RPAは「複雑な手順を踏む操作」や「一般的ではないアプリケーションの操作」を苦手としています。
RPAツールの多くはオフィス業務で利用頻度が高いMicrosoft Excel/Word/PowerpointやEdge等ブラウザーについては簡単に操作できる命令が多数用意されています。
一方でそれ以外のソフト(財務会計・販売管理ソフト)用にはそういった命令がありません。このようなツールをRPAから操作するためには、「財務会計ソフトのウィンドウ名を検索→ウィンドウ内に配置されているXXテキストボックスに値を入力する」など、多少複雑な命令を伴います。
自部門の業務で、RPA化に向いている業務はどの程度あるか?を把握することが重要です。
RPAツールの導入は短期・中長期の目的があります。
先に述べたように、RPAは繰り返し行う操作を忠実に再現することに長けています。
日々の業務で毎日毎週同じような入力や資料作成に向いています。
限られた社員リソースをこのような誰にでもできる業務から解放し、定型化できない業務へとシフトできます。
人員コストの削減も達成できる目的の1つですが、「自分の仕事を奪われる」と思われがちのため、今後注力すべき「定型化できない業務」を明確化していった方がスムーズに導入できると思います。
「新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変すること」がDXの定義であり、RPAはまさにDX実現に向けた最初の一歩と言えます。
将来的にERP製品導入を検討する場合においても、RPAは業務の部品になりえますし、既存業務フローを可視化するための手段になりえます。
※ERPとは?
企業の持つ資源=「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一元管理し、有効活用するという考え方、またはそれを実現するためのシステムを指します。
多くの企業がDX実現のため導入を検討しているシステムです。
まとめると、
・業務を自動化することでDX化への第一歩を踏み出すことができる
・将来的に本格DXを実現するためERPを導入する場合
- 既に自動化したRPAをそのまま流用して、ERPの一部として運用できる
- 業務自体の見直しを図る場合でもRPA化により既に業務が可視化されている
→検討の材料にすることができる
になります。
RPAツールは多くのベンダーからリリースされており比較サイトも数多あるため、ここでは優劣評価は行いません。
私もWinActor/UiPath/Automation Anywhereと様々なRPAツールで開発を行ってきましたが、機能的にはどれも大きな差は無く、シナリオの書き易さとクライアントの意向でUiPathを選ぶことが多かったです。
これは完全に好みになりますので、もう少し客観的な要素をご説明します。
企業担当者は最優先される項目だと思います。
RPAツールは月間ライセンス・年間ライセンス・買い切り方と様々ですが、年間ライセンスがややが多い印象です。
国内屈指のRPAツールWinActorの例ですと、
実行用ライセンス・・・1台につき20~30万円/年
開発用ライセンス・・・1台につき90~100万円/年
管理統制サーバー・・・1台につき230~240万円/年
でした。
将来的に大量のロボットを開発・運用する計画の場合、管理統制サーバー機能を視野に入れたツール選びが必要です。
一方で、「スモールスタートして徐々に拡大を図っていきたい」ニーズもあると思います。
UiPathやAutomation Anywhereには「従業員or利用ユーザーが250人未満で、売上高が500万ドル未満の組織」に対して無料でツール提供を行っています。
マクロマンは機能制限が無く使える完全無料のソフトウェアで、商用利用も可能です。
RPAのスターターキットとして最適です。
大量のロボットを開発・運用する場合、1台のPCではロボットの実行用PCが不足します。
管理統制サーバー+実行用PCが複数台あれば、管理統制サーバーがロボットを一括管理し、未実行のPCを探してシナリオを送信して実行を開始してくれます。
ここまでRPAの概要をご説明しましたが、「実際にロボットと言うが、どんなものなの?」というのをご紹介します。
メールを利用するロボットが多いですが、導入する側からすると準備いらずで使いやすいメリットがありました。
「本日の顧客・取引情報をExcelにまとめてメールで配信してくれるロボット」
→特定の時間に動いて、システムから情報を集めてメールで配信してくれるロボットです。
ほしい情報を受け取る際にメールを経由しています。
「顧客名・金額・請求日を書いたExcelファイルをメールで送信すると、請求書pdfを送り返してくれるロボット」
→利用者が使いたいときにメールで依頼することで、ほしい結果を返送してくれるロボットです。
先に述べたマクロマンは無料のRPAツールですが、他にもAutoitやUWSCといったシナリオをプログラムに近い形で記述するツールも存在します。
ここまで実現できるツールであればほぼどんな操作も実現できます。
ただし、向き・不向きは一般的なRPAツールと同様です。
Windowsの操作をシナリオ化する技術は20年前から実は存在していました。
上記で述べたUWSCというツールが最初に開発されたのが1999年。
UWSCはExcelVBAに似た構文でシナリオを記述してWindowsの操作を自動実行できるツールです。
現在のRPAツールと比較するとローコード(プログラミング言語を使わず、操作シナリオをドラッグ&ドロップやメニューから選択して構築できるツール)開発ではありませんでした。
当時はソフトウェアの単体・結合テストを実行することが主な目的で、数千行にもおよぶシナリオを記述し、PCは夜な夜な唸りを上げて人の代わりに作業を行っていました・・・
ということで2000年代中盤以降のソフトウェア開発現場ではすでにPC操作の自動化は実現されていました。
惜しむらくは、私を含めた当時の開発者はUWSCの完全な「ユーザー」視点にしか立っていなかった点です。
すでに業務はWindows中心で、Excelも一般化されていました。
UWSCはWindowsアプリケーション操作にも長けており、当然Excelの操作も可能です。
この時代に「開発現場だけではなく、一般的なオフィス業務もUWSCライクに自動化することをビジネスとして展開する」という発想があれば今頃ひと財産築けていたかもしれない、と妄想したりします。
当時は高齢少子化が現在ほど顕著ではなく労働力も枯渇している状況ではなかったので、そう簡単には行かなかったかもしれませんが・・・
RPAを積極的に導入したにも関わらず、定着せず初期投資のみで結局運用・定着に失敗した企業様もいらっしゃいます。
反対に導入して2年が経過したが未だにロボットを作り続けている企業様もいらっしゃいます。
いかにRPA導入を成功させるか?をポイントに説明していきます。
コンサルタントとRPA開発ベンダーを使ってオフィス業務のRPAを推進。
オフィス業務実施部門の1つより応募のあった数件の業務をRPA化。
実際の効果など現場側の意見をヒアリングし費用対効果を図り、一定の効果はありました。
ただその後、積極的にRPA化したいと手を挙げた部署は無く、ランニングコストもかかることから自社部門でロボットを預かり、徐々に利用もすたれて定着することなく終わってしまった。
コンサルタントとRPA開発ベンダーを使ってオフィス業務のRPAを推進。
オフィス業務実施部門の1つより応募のあった数件の業務をRPA化。
実際の効果など現場側の意見をヒアリングし費用対効果を図り、一定の効果を確認。
経営層の推進で分科会を立上げ各部門からRPA化可能な業務の洗出しを指示し、引き続き開発ベンダーにRPA化を依頼。
1台のPCではロボットを動かすには足らず、数台のPCで動的に実行できるよう管理統制サーバーを導入。
現在では作製したロボットは100以上になり、他部門への展開を推進中。
上記事例からRPA化推進のカギになるのは、DXの一歩としてRPAを会社・経営として推進できるかが重要です。
ツールの選定やランニングコストに目が向きがちですが、いかに推進・費用対効果を分析できる体制を準備できるかがポイントになります。
繰り返しになりますが、RPA導入成功のカギは組織・経営としていかに協力に推進できるかです。
これからRPA導入検討中の担当者様は、継続推進できる組織の立ち上げも併せて検討してください。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
吾郎丸